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日本の多くの小売業は、価格一辺倒で個性がないし、メーカーの商品やマーケティングも似通ったものが多く、消費者から見たら違いを感じにくい。人口が減少しマーケットが縮小する日本において、市場を活性化するために、新しいマーケティングイノベーションが必要だ。今回はユニークさが評判で業績を伸ばしている米国の小売業を紹介しよう。その名は「トレーダージョーズ」(Trader Joes:略してトレジョと呼ぶ)。グルメフード、オーガニックフード、ベジタリアンフード、輸入食品、各種ワイン、ユニークな冷凍食品等を品揃えし、質が良いものが安く買える「グルメスーパーマーケット」なのだ。彼ら流の表現によると、「シャンパンテイスト&ビールプライス(シャンパンのような美味しい商品を、手頃なビール価格で提供する店)」ということになる。例えば、牧草の香りがするという春にしか作れないチーズや、炒めた玉ねぎ入りのイングリッシュチェダーチーズなど、他社では見ることのない斬新でユニークでしかも美味しい食品が、バリュー価格で品揃えされている。20数名いるバイヤーが世界中や国内を歩き回ることでこのセレクションが実現しているのだ。
トレジョは今はやりのオムニチャネルには背を向け、「我々はネットでの販売はしません。ご来店頂くことでプラスαの付加価値を提供いたします。」という方針をはじめ、「ナショナルブランドは扱いません。」、「ディスカウントチラシはうちません」、「ディスカウント販売はしません」、「ポイントカードは発行しません」、「ワンストップショッピング機能はありません」等を堂々と宣言している。まさに現在の小売業が行っているのと真逆の戦略で、「独自性をもって戦わずして勝つ」を基本方針にして勝ち残っている代表的なスーパーマーケットだ。
この企業は非上場企業のため、企業の情報を出来るだけ出さない方針で、マスコミが経営者を取り上げることを嫌うし、社員の雑誌インタビューをも禁止している。これから述べることは主に知り合いの社員や元社員、取引先そしてコンサルタントの人々から集めた情報をまとめたものだ。情報の正確性に欠けるところがあった場合はご容赦頂きたい。


チェーンストアエイジの2017年9&10月号によると、2017年6月30日決算で売上げは130億
ドル(推測)、北米小売業ランキングで36位に位置付けされている。店舗数は467店舗で創業50周年を迎えている。
スタンフォード大学のビジネススクールを卒業したジョー・コロンビー(Joe Coulombe)氏が1958年Pront Convenience Storeを買収し、企業をスタートさせた。その後1960年代同業態の7-イレブンの南カリフォルニアへの進出により、戦うことは出来ないということで、ビジネススタイルをコンビニエンスストアからノンフリル/低価格グルメストアに変換、1967年にトレーダージョーズへ店名変更して今のスタイルになった。その当時大手と共存するための鉄則「戦わないこと。そのために独自性を確立すること」を学び実践に移した。
その特徴を見てみよう。300坪程度の小型店、品揃えは2500~4000アイテム程度と絞り込んだ特色のあるグルメフード(殆どの商品がPB)、バリュー価格、楽しい店内装、フレンドリーな従業員、という具合だ。最初からナショナルブランドはアルコール以外は殆ど取り扱わなかったが、それも大手スーパーマーケットとの戦いを避けるためだった。ドイツのハードディスカウンターAldiが1978年にトレーダージョーズを買収。買収後も従来のトレーダージョーズのビジネススタイルは変わらず継続されている。1988年に創業者コロンビーはトレーダージョーズを退いたが、彼の作った企業風土は今も継承されている。米国グローサリーストアの顧客満足調査では、頻繁に第一位を獲得している。その高い顧客満足の主な要因としては、@「ショッパビリティ」(買いやすさ:質の良い商品/手頃価格/クイックショッピング)A「フレンドリーな接客」 B「楽しい買い物体験」の3点が挙げられる。


基本戦略は「Uniqueness」(他と違う独自性)。その考え方が各種戦略にしっかりと織り込まれている。
1)顧客戦略
a)「顧客第一を貫くために、上場会社にはなりません。」
上場企業は投資家から成長性を求められ、顧客満足より投資家満足に走りがちで、短期視点の成長性と利益性を追求する結果、顧客に見放されていくケースが多々あります。トレジョは非公開企業なので「顧客満足」の徹底追及をします。

b)「すべての消費者に満足を提供することは出来ません。ターゲット顧客を満足させることに専念します。ターゲット顧客は次の人たちです。」
イ)教育レベルは高いが、収入はそれほど高くない人
・年間所得5万ドル程度で、価値を大切にする消費者。教育レベルの高い人は、PBに
抵抗感がなく、グルメ志向、健康・環境にやさしい商品を好む。そして収入がさほど高くないのでバリュー価格を求める。
ロ)プロフィール
・年齢21〜45歳、既婚者・未婚者各50%、女性・男性各50%、2/3は子供なし。
これらの人達は多忙な人が多く、便利な店でのショートタイムショッピングを好む。
ハ) 健康志向だが、オタクでない人
・オーガニック、ナチュラル、フリーフロム、環境にやさしい食品を好む。
ニ)社会的そして政治的な事柄に関心がある人
・オーガニック、ナチュラル、フリ−フロム、環境にやさしい食品を好み且つグルメ志向で
ワイン好き。
ホ)よく読書をし、よく旅をする人
・インターナショナルの食、国内諸地域の食に興味を持ち、積極的に賞味する。?
c)「ロイヤルカスタマー作りのためのポイントプログラムはありません。」

米国のスーパーマーケットの顧客の7割はスーパーマーケットのロイヤリティプログラムメンバーになり、ポイント集めをしています。しかしトレジョはポイントプログラムを提供しません。「トレジョでしか買えないプライベートブランド商品や専売品」、「楽しい買い物体験」、「フレンドリーな接客」等によってロイヤリティを高めています。そしてお客様の来店頻度を高めるために、毎週のように新製品を20〜25アイテム導入しています。

2)店のコンセプト

a)当店はライフスタイルストアです。当店のライフスタイルに共感してくださるお客様にご利用いただいています。健康・環境を重視し、美味しい食事を楽しみ、シンプルライフでリラックスしたライフスタイルを提供するお店です。

b)週一回の日常生活に必要な商品のワンストップショッピングは、他のスーパーマーケットでして下さい。当店はご家庭で足りなくなった商品を間に合わせで購入する店でもあります。ですから週に
2度いらしてください。

c)お客様に他の店で得られない美味な食べ物/輸入品の食品&ワインを提供しています。美味しい食べ物の宝探しの場感覚の店です。

3)立地・店舗展開戦略

a)「一等地には出店しません。家賃の安い2等地に店を出し、バリュー価格を提供します。」
・小売業の場合、立地が成功の7割の要因と言われています。そのため1等地に出店したがり
ますが、トレレジョはそのような立地は家賃が高いので避けて2等地でバリュー価格を提供いた
します。

b)「ビッグチェーン企業になることには興味はありません。だから、急いだ店舗展開はせず十分力が
ついてから新しい地域に出ます。」
・企業文化の十分な浸透と店舗運営を任せられる社員の成長を待って、新しいところへ出てゆきます。焦った多店舗展開で失敗した小売業をたくさん見てきています。(北カリフォルニアのサンカルロスでは、住民がトレジョの誘致のためにレター作戦を展開し、出店をトレジョに熱望した。レター作戦から数年後に出店したが、住民からの要望が強い場合出店するケースもある)

c)「大型店は出しません。顧客サービスがおろそかになるからです。顧客にそして商品に充分目が届くのは350坪程度までです。」
・店舗サイズは250坪〜350坪程度で、通常スーパーマーケットの1/4〜1/5程度のサイズです。そのため駐車場スペースも小さいです。

4)プレゼンテーション戦略

a)トレジョは買い物が義務的なものでなく、楽しい時間になるように「素晴らしい体験」を提供することを大切にしています。そのために従業員だけでなく、お客にも参加して頂き、共に作り出す素晴らしいショッピング体験を共有し、最高のレベルのバリューを作り上げていきます。イースター、ハロウィンやクリスマスなどには、仮装するスタッフも多く、お客もテンションが上がって店がパーティ−会場のように楽しい空間になっています。

b)店舗の雰囲気は「Laid-Back Tropical Concept(リラックスしたトロピカルムード)です。
・トレジョのトロピカルなお店の雰囲気は創業者のジョー氏のカリビアン旅行からアイディアがきています。従業員がアロハシャツを着るのも、買い物という小旅行を楽しんで欲しいからです。一般従業員はクルー(乗組員)、マネージャーはオフィサー、店長はキャプテンと呼ばれ、アロハシャツを着て働きます。インテリアは南太平洋をモチーフにしており、店全体がリラックスした雰囲気を醸し出しています。レジにはベルが置かれ、一般従業員(クルー)がマネジャー(オフィサー)や店長(キャプテン)を呼ぶときには、レジにあるハンドベルを鳴らし船上の雰囲気を作っています。一回のベルは、「レジに並ぶお客様が増えたので。新しいレジを開いてください!」、2回のベルは「ちょっと手助けしてください!」、3回のベルは「キャプテンちょっと来てください!」の合図です。

c)無味乾燥で面白くないスーパーは我々の対極です。苦痛な買い物でなく「楽しい買い物体験」をしてもらうために、店内の雰囲気作りには極力手をかけ、スーパーマーケットのディズニーランドを標榜しています。
・エキサイティングな店内装飾、魅力的な手書きPOPやポスター、迫力満点の山積陳列等
工夫を凝らしています。そのため絵の上手な人(トレジョアーティスト)を雇って描いてもらっています。

d)商圏に密着した店舗作りを試みていますので、壁面にその地域の有名な景色、建物、人物の絵を描いてローカル性豊かな表現を大切にしています
次月号(Part-U)で引き続きトレジョの独自化戦略についてご紹介をいたします。


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